カ:亀淵友香

ユカさんは、現在「 The Voice Of Japan 」という日本屈指のゴスペルグループのリーダーであり、また、山下久美子を始めとする数多くのシンガーの歌の師匠でもある。古くは、GS末期に「リッキー&960ポンド」のボーカルでもあった。

とにかく、包容力のある歌手であり、ソウル(今ならR&B)っぽく歌わなくても、充分ソウルが伝わって来る日本では稀少なシンガーで、昨今のゴスペルブームでのシーンへの露出は、彼女の魅力の一面に過ぎない。

この連載は、実はこのレコードを紹介したいがために始めたと言ってもいいのだが、それは、78年にキテイから発表した亀淵友香の「BACK STAGE」( Kitty MKF-1029)というアルバムなのだ。プロデューサーは、石田長生。バッキングは、当時の石やんのバンド「GAS」です。

ユカさんと石やんとの組み合わせは、たぶん、金子まりちゃんあたりの下北人脈によるものであろうが、このコラボレーシヨンは最高の成果をレコードとして残した。石やんの数ある当時のプロデユース作(加川良・大塚まさじ・誰カバ・・・)の中でも群を抜いており、「GAS」の演奏もバッキングに徹して出しゃばらず、歌を際だたせる最高の演奏である。



西岡恭蔵さんの作品は、しばしば本人よりカバーの方が良かったりするけれど、このアルバムにおける「アフリカの月」と「ジプシーソング」は、まるで歌が旅をしているようにエキゾテイックだし、「Let's Happy Love」のウキウキする感覚には、人生は素晴らしいものだと思いたくなるような力がある。

「歌は人を眠らせるものではなく、目覚めさせるものなんだ」と言ったのは、確か友部正人だけど、静かにまた時に明るく歌われる<歌たち>に、いつしか心が揺さぶられ高ぶっていく事を、このアルバムは確かに教えてくれる。

何か誉めてばかりで申し訳ないですが、僕としては、多くの人にこの「BACK STAGE」という素晴らしいアルバムを聞いてもらいたいのです。どうか、CDとして、いつか発売されますように!

PS:カに濁点という事で、「GAS」についても書かせてください。

「GAS」は、結局バンドとしてのレコードを残さずに解散(レコーデイングの途中で裕ちゃんが指を怪我して中断・・・と当時の雑誌で読んだような記憶がある)してしまったけれど、ザ・バンドのような編成、オリジナル曲を中心に全員ボーカルというスタイルで、「ソー・バッド・レビュー」と「ボイス&リズム」というソウルテイストのグループ結成の間に生まれた石やんの現在のソロの音に近い感じのロックバンドだった。

ライブは、78年頃に何回か観たが、ロックアレンジの「A列車で行こう」やロイ・ブキヤナンの「HOT CHA」似の「大腸カタル」などのインストでスタートし、石やん歌う「星くずの唄」(三橋美智也のとは同名異曲)などのソウルバラードから、プログレ風味の曲を近藤歌う「錯覚ダンス」、ちょっとおちゃめに松本歌う「ムーチョ・アミーゴ」、そして裕ちゃんにもリードボーカルの曲があった。「GAS」メンバーは、石田長生(g)藤井裕(b)松本輝男(ds)中西康晴<前期>(kbd)近藤達郎<後期>(kbd)の5人で、中西・近藤のダブルキーボード時代もしばらくあった。

このキーボードのポジションが佐藤博という編成で、ランデイ・クロフオードのジャパンツアーを彼等がサポートした事があって、81年3月31日に赤坂の草月ホールで観たステージは、僕が生涯観たライブの中で5本の指に入る素晴らしいパフオーマンスだった。アンコール、裸足に浴衣姿で登場したランデイのリラックスした表情から、異国で結成されたツアーバンドに寄せる信頼感が伝わって来て、小さなホールにすごくホットなバイブレーションが起こった。その後、92年の「ミート・ザ・ワールド・ビート」で、石やんとランデイのセッションが再現されたが、野外という事もあり散漫な印象しか残っていない。

最後にもうひとつだけ書かせてください。石やん94年発表のソロアルバム「Mouth&Fingers」の中に収められている「メロデイ」は、90年代における「GAS」の再結成レコーデイング(93年発表の「ラ・ジ・カ・セ」も同じメンバーです)でもあり、アル・グリーンの「シャ・ラ・ラ」のような<ハイサウンド>が楽しめる好演で、思わず口ずさんでしまいます。

2002年1月 YASU    



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