←Top

漂月記

02/3月deYASU

例年、3月の月初めと月末では季節の顔が違うのに、今年はずっと暖かで、そんな早春の3月初めに北の街へ行きました。仙台は、本当に久しぶりですがスッキリした街並みが好きです。仕事が終わって、「GO」を上映している映画館めざして歩いたら、結果的に四条河原町から京都駅の距離ぐらい歩く事になりました。商店街が途切れてからも随分歩きましたが、さわやかな夜風に吹かれて歩く気分は、独りでもいいもんです。その時に頭に浮かんだのは、鈴木茂の「ソバカスのある少女」で、<北の通りで、ソバカスのある少女を見かけたら、声をかけてくれ…>という曲の詩とメロデイが、すごく仙台の夜道にピッタリ来ます。北の街の女性は、ソバカスというより、肌のきれいな人が多くて、大人になっても少し赤みのある白い肌が、いつまでも少女のように輝いているように思います。「GO」が、最近観た日本映画の中では、最も本篇らしい風格があり、満足(とくに、脚本の構成)したので、いい気分のまま、帰りも夜道を歩いて歩いて。<今でも髪は長いだろうか、君も友達なら声をかけてくれ…>あ、そう言えば、ボブ・デイランにも「北国の少女」という歌があった。いいね!北の街、そして北国の少女。

今月は、書きたい事いっぱいで!映画ならば、「GO」からは「ガキ帝国」、「ミスタールーキー」からは「男ありて」を思い出すなんて事、プロレスならば、新日本京都大会とノア京都大会の女性客の差異の不思議などいろいろありますが、2人の芸人魂に圧倒されましたので、山下達郎と白山雅一について書きます。山下達郎がソロデビューした76年の「CIRCUS TOWN」から82年の「FOR YOU」までの7枚(ライブ盤1枚含む)、つまり20代に作ったソロアルバムの楽曲のみを歌うというマニアなツアー「RCA/AIR Years Special」に行って参りました。今回のツアーは、チケットの入手が困難と言われておりましたが、発売日に高島屋京都店のチケットぴあに朝の9時に並んだら、約30分後には整理券を手に出来ました。今回のツアーのために、フアンクラブにも再入会(ツアーがある時だけ会員になるという、不埒なフアンだね)しましたが、遅きに失して先行予約の案内は届かず、はて困ったな?と思っていたので、大変ラッキーでした。

さて、コンサートはいつものギターカッテイングのあの曲からスタート。今回は、ペシャリがいつも以上に長く、バンドのメンバー紹介も和やかに、大阪フエスなのにライブハウスのような雰囲気でした。地味めの曲を含め、3時間以上の長いショウなのに、飽きさせないのは達郎の歌唱力と楽曲の良さはもちろんですが、Nelson Super Project なる別名まである達郎バンドの実力の成せる業でしょう!「MUSIC BOOK」の分厚いコーラス(佐々木・国分・三谷)はどうだ。ゴージャス!スゴ過ぎる。佐橋君のギターや土岐さんのサックス、そして難波・重実両氏の鍵盤ソロの味わいは、おなじみの楽曲にライブでしか味わえないスパイスをふりまく。しかし、達郎バンドの要は、青山純(ds)伊藤広規(b)のリズム隊で、これに達郎のソウルフレーバー溢れるカッテイング(日本人では、他に山岸潤史位か?)のギターが加わっての演奏は、鉄壁と言っていい程決まっている。歌舞伎ならば、「日本一!」とぞめく所です。

とくに、伊藤氏のベースプレイは、カッコイイ!の一言。MTWBに斉藤和義バンドで出た時も、間近で観ててカッコイイと思ったけれど、ロック・ソウル・フアンク…、何を弾いてもベースに表情が見えるプレイヤー、スゴイ人です。青山・伊藤・重実&佐々木久美(cho)ちゃんは、MISIAのツアーでもバックをビシッと固めているし、佐橋君は、テインパン系のライブなど、年寄り?のミュージシヤンからよくお声がかかる仕事人たちです。こんな人達に囲まれて歌う達郎は、リラックスムード。お約束の「RIDE ON TIME」のエンデイング、声の続く限りシャウトするパフオーマンス(上岡龍太郎が、途中休んで「どう、このコンデイ〜シヨン!」とタイヘイ夢路のギャグを言うて欲しいと、本に記した)も、達郎の芸人魂の一面が伺え、何回観てもバカバカしくも微笑ましい。(やはり、達郎は東京でも下町育ち、寄席芸人の感覚も併せ持つているね)アカペラも、「オン・スト」イチのお気に入り「YOU BELONG TO ME」(ジョー・スタッフオード)が聞けて最高でした。次は、また3年後にフアンクラブへ入ろう。


白山雅一先生(廻りは、師匠と呼ばない)は、今年78才、現役最古参の元祖歌謡声帯模写。柳家三亀松の弟子ですが、昭和20年代に歌謡曲のモノマネでブレークしたとか…。頑固にそのスタイル(真似る対象)を変えないため、モノマネする歌手は、ほとんどが故人だとか。NHK-BSの番組で見かけて以来、何とか一度ナマで観たいと願っていたところ、国立演芸場の特別企画公演「歌って踊って大爆笑」でやっと望みが叶いました。他には、「かっぽれ」の桜川ぴん助社中や快楽亭の師匠、聞いている内に、だんだんおかしくなってくるのが不思議な川柳川柳(かわやなぎせんりゅう)師匠など多士才々の面々。白山先生は、まずは十八番灰田勝彦の「鈴懸の径」からスタート。デイックミネ・東海林太郎・田端義夫などを全盛期と晩年の歌い分けなどで聞かせた後、三遊亭円生の声色。このあたりまでは、TVでチエック済だったのだが、本日は国立の舞台という事なのか、何と歌舞伎の声色まで披露。これが、中村歌右衛門の追悼番組でチラッと観た、最晩年の舞台より「建礼門院」幕切れの場面。建礼門院に歌右衛門、後白河法皇に島田正吾。歌右衛門は、舞台に立つ直前まで化粧をした顔に酸素マスクをつけていたとか、島田正吾と明日の舞台での再会を約束して毎日手を重ねてから劇場を後にしたとか、逸話の残る演目。

最近、写真集で観た尼僧姿の建礼門院の歌右衛門さんは、菩薩のようにおだやかに美しい。島田正吾もたぶん当時80才を超えていただろう。老境の名優同士が演じた名場面を芸人として舞台に再現する白山先生。二人の名優に対するリスペクトが節々から溢れるその声色。寄席である事を一瞬忘れた時、実によいタイミングで大向こう(と言っても小さなホールの後方)から「大成駒」の声が掛かる。いや〜!お江戸の寄席は気が利いているなと思いました。歳を重ねて出る味わいは、人間国宝だろうと寄席芸人だろうと変わりません。老いて真摯な姿勢の舞台ほど、心を打つものは無いと思います。白山先生の舞台を観れて本当によかったと思っていたら、もう最後の曲藤山一郎「東京ラプソデイ」。陽気なメロデイに、ここが寄席である事を思い出させて、お次に交代と…なるほどねえ。かっぽれに送り出されて外に出ると、今年は早咲きの桜が満開で、<花咲き花散る宵に…>楽し都、東京はええとこですね。


前月の月記
www.hidariuma.com
左り馬