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漂月記

02/9月deYASU

私は、永ちゃんより永ちゃんのフアンが好きだ。コンサートの1日を朝から、いや何ヶ月も前から楽しみにしているであろうその姿が健気だ。78年秋岡山武道館、「ゴールドラッシュ」のツアーでも聞いた私の大好きな「鎖を引きちぎれ」がリメイクされ、シングルカット。そして、デビュー30周年の東京スタジアムに於けるイベント「 THE DAY 」と、私の中でも「永ちゃん!永ちゃん!」と<永ちゃんコール>が高まって、行って来ました府中まで。ライブの内容は、会場の問題もあり正直今いち。でもでも、<白・赤・青・黄…>と原色の派手なスーツに身を包み、肩にはバスタオルのフアンがスタジアムを埋め尽くし、手を交互に上げての「永ちゃん!永ちゃん!」と連呼するその姿は、感激モノです。

世界のYAZAWAにはついになれなかったが、そのチャレンジを後悔する事なく「あの時、世界に挑戦したから、今の僕があると思います。」というような内容を語る永ちゃんもカッコイイ。全世界より、日本の埼玉の群馬の千葉の…純なフアン達だぜ、永ちゃん!!日本のロックは、決して日本語のロックという意味ではない。30年(または40年)かかって、ジャパニーズ・スタイルのロックとして確かに今ここにある。

ここに1冊の本があり、その帯に次の文章が書かれている。「黄昏時の街角に突如として出現する夢のリング。今夜も少女達が透明の汗をながす華の時間がやってきた。」今は無きプレイガイドジャーナル社から84年に出版された、文:大山健輔・写真:垂水章の密着取材ルポ「女子プロレス・ララバイ」である。そこには、全女こと全日本女子プロレスの当時の旅の様子が、プロレス門外漢ふたりの新鮮な驚きの連続として記されている。。「突如として出現する夢のリング(野外の特設会場)」は、多団体化で都市部中心の興行形態となり試合数も減少した現在では少なくなったが、「少女達が透明の汗をながす華の時間」は今も存在し続ける。30才を超えてもリングに上がる女子プロレスラーが増えた今でも、その汗は透明であり、その魂は少女のままである。何故、今夜も彼女達は、「この野郎!」と叫びながら相手にぶつかっていくのか?その声は、満たされない少女のこころの叫びのようだ。


ここに1本の映画があり、広島の街で私を待っていてくれた。イギリスの女性スタッフが日本の女子プロレスに興味を持ち、合宿所にカメラを持ち込んで粘った成果、それは、その女子プロレス団体の名前にちなんで、「ガイアガールズ」という題名のドキュメント映画になった。「ガイアジャパン」は、全女で一世を風靡した長与千種が自分なりの理想を追求して興した団体である。長与の理想とは、プロとしての最高の試合を出来る選手とリング外でも最高に魅力ある人間との両立ではなかったのか?と私は思う。映画の中で、長与は「お客様の前に立つプロとして、それでいいのか」を練習生たちに繰り返し述べる。プロテストの基準もその一点である。自分の感情を観客に伝える力のないものは、プロのリングに上がれないのだ。その前には、もちろん過酷な基礎トレーニングがあり、その時点で去っていく少女が大勢いる事も、映画は伝えている。練習生と並んでスクワットをやる先輩(ガイア1期生)の対応は、驚く程やさしい。たぶん、1期生は長与からそんなやさしい扱いを受けていなかった筈なのにである。そして、長与自身はその何倍もの理不尽なシゴキに耐えて全女のトップに立った。前述の「女子プロレス・ララバイ」の中にも、そんな全女のエピソードが紹介されている。「一人だけ殺してもいいって言われたら、わたし、XXさんを殺していたでしょうね。(中略)現在活躍しているスター選手の多くが、XXのシゴキを体験し、殺したいとまで憎んだ。」その中で育った長与は、自分が新弟子の頃に味わった体験から理不尽なものを取り去ったものを、ガイアの道場の持ち込んだに違いない。その長与の子供である1期生は、孫にあたる練習生たちに長与のおもいをどう伝えるのか?この映画は、そんな1期生のとまどいがそのまま写し出されていて、興味が尽きない。

1期生に里村明衣子という選手がいる。目ん玉の大きい可愛い女の子も、いつのまにか立派な体つきになり、ガイアを(いや、日本を)代表する選手になった。デビュー時より里村は、男の子のような爽やかさがあった。気はやさしくて、力持ちの金太郎さんのイメージが里村には似合う。そんな里村が「こんな映画を観ると、ますます練習生来なくなるだろうな〜」と語るシーンがある。1期生の後には、広田さくら1人しかいないのが、ガイアの現実なのだ。でも、プロレスの怖さを練習生に教えなければならない立場の里村の表情は、ストイックで限りなく美しい。里村のドロップキックを口に受け、口からだらだら血を流しながら里村の話を聞く練習生の竹内に、「口をゆすいでおいで」と言う彼女の言葉からは、彼女のやさしい気持ちが伝わって来て、グッと来た。人気者の金太郎さんだけでは済まないポジションに里村は置かれている。そんな悩みを里村は誰に打ち明けるのだろう。竹内の再テストで、いきなりロックアップ(首四つ)〜ロックアップは、試合の序盤、相手の力量を測る時に使う〜から入った里村からは、「竹内、頑張れよ!」という気持ちが痛い程伝わって来た。このシーンは、全編の中で最も心に残るシーンだ。(里村金太郎君、君のやさしい気持ちがどうか壊されませんように…。)「ガイアガールズ」、輝きたいと願っているすべての人にぜひ観てもらいたい。

もう一本、テアトル新宿のレイトショーでサトウトシキ監督の新作「夢なら醒めて」を観て、すごく興奮した。クールでストイックなサトウワールドが、裸や絡みの全く出て来ないこの映画で、はじめて結実した感がある。これは、人のおもいの強さに関する優れたフイクシヨンである。サトウトシキについては、たくさん書きたい事があるので、今回はここまでに…。「夢なら醒めて」も必見!です。

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