2011年6月の記録と記憶

2011年6月の記録と記憶

子供(小中学生)が主人公の映画は、照れくさいようなせつないような感覚になります。洋画では「スタンド・バイ・ミー」のラスト、少年たちがそれぞれの家に戻るために路上で別れるシーンを思いだすと、胸がいっぱいになります。それで思い出したのですが、私のイチバン好きな映画「の・ようなもの」のエンディングも、一人一人と帰っていく夕暮れのビアガーデンの場面に近いものがありますね。楽しい時間が終わり、また日常に戻っていく感覚ですか。そういう意味で、是枝裕和監督の新作「奇跡」は、子供の世界を描いた映画としてよく出来ています。何より、子供が走るシーンを多用しているのに感心しました。子供は、いつでもどこでも走るものだし、それが映画のリズムになります。九州の鹿児島と福岡に離れて暮らす事になった男の子の兄弟が、それぞれの仲間と共に願い事を叶えるために小さな冒険の旅に出る話ですが、兄弟役の子供漫才師まえだまえだ(実の兄弟)の存在が映画を活き活きしたものにしています。「奇跡」は現在の日本の小学生が主人公、J ・J・エイブラムス監督の「SUPER8」は30年前のアメリカの中学生が主人公ですが、比較すると今の子供は、本当にしっかりしているなと思います。どちらの作品にも、少女が仲間の一人として登場しますが、男の子と違う感性を持つ存在としていずれもうまく描かれています。それは、無意識な性愛と母性の発露でしょう。「SUPER8」は、最後までおもしろく観る事が出来ましたが、SFの常でラストが唐突に終わる事も含めエイリアンの存在が希薄であり、ホンが粗いような気がしました。

ホンと言えば、惜しいと思ったのが山下敦弘監督向井康介脚本の新作「マイバックページ」です。このコンビの作品では、田舎町に起こる非日常な出来事をシニカルに描いた「松ヶ根乱射事件」がおもしろかったですが、今回は原作(川本三郎)もあり、また妻夫木聡、松山ケンイチという当代人気俳優の共演という条件もありで、よそゆき感のある作品になりました。この作品については、いろいろな批評が出ていますが、私は東大を卒業して一流の新聞社に入社した青年(妻夫木聡)とその周辺をもっと批判的に描くべきではなかったかという一点が惜しいと思いました。対峙する松山ケンイチ扮する学生運動家は、確か芸術系の大学生として登場します。私は、日本大学芸術学部に1973年から77年まで在籍しましたが、当時東大京大はもちろん早稲田の演劇科など大学のブランドにジェラシーがあったのは事実です。余談ですが、73年の東京ヴォードビルショーの芝居には、「日芸を3度卒業しても、慶応には勝てない。」という台詞があって大笑いしました。大阪芸術大学出身の山下・向井コンビには、たとえジェラシーは無くても、権威主義のジャーナリズムという体制側に冷や水を浴びせて欲しかった。朝刊紙ではなく夕刊紙のアプローチで、彼等の妄想で、物語を掘り下げて欲しかった。原作者がいる中で、虚構を貫くというのは大変な作業だったろうが、新聞社のダークサイドをもっと描いた方が、逆にラストの妻夫木の涙に感情移入が出来、妻夫木主演の映画として成立したのにと惜しい気がしました。共演の松山は、妖怪のようにつかみ所のない人物を大きく掴んで演じていたという印象で、恐ろしい役者さんです。これも余談ですが、松山が、アジトの部屋で恋人とお祭りを始める中、その隣室で黙々とヘルメットにペンキを塗っている男女を描く場面を観ながら、若松孝二ならこのアジト部屋と男女4人の登場人物だけで1時間ものを撮るだろうなと思いました。奥田民生が英語詞を、YOKINGが日本語詞を歌う主題歌「マイバックページ」は、桜井くんのギターソロもいい感じで、今年のマイベストシングル決定です。

昨夏、新京極の「TANABATALIVE」に、くんちょうさんのバンド「STOMPS」で出演していただいたキーボード奏者のマンボ松本さんが、6月1日公演先の広島で急死されました。直接言葉を交わしたのは数回しかありませんが、いつも彼の優しい人柄が伝わって来ました。昨年暮、スターダストクラブを訪れた時が、サックスの小松竜吉さんとのユニット「PINES」のライブの日で、マンボさんの歌もたっぷり聴く事が出来ました。たぶん、それがお話をした最後だと思います。謹んでご冥福をお祈りします。そのマンボさんを偲んで、5日磔磔にて、ギタリストの田中晴之さん中心に京都ブルーズオールスターズによる追悼ライブがありました。磔磔でのブルーズ系ライブにあれだけ人が集まったのは最近見たことない程の盛況ぶり、Sちんがなんとイチバン前に座っていたので、私はその隣りに割り込んで観せていただきました。久しぶりにPMのAちゃんにも会いました。小竹兄にギターを借りて飛び入りした西野やすしさんのギターソロもすごかったですが、私の注目はカサやんことカサスリムさんのエレクトリックブルーズで、独特の味わいがあり大好きです。この日は、ギタースリムの「Things That I Used to Do」でしたが、こういう選曲をするカサやんは、京都ブルーズオールスターズの中でもその個性が引き立っています。

6月は、ライブがいっぱいで記録するのが大変です。高槻JKカフェでの小竹兄弟、カサやん、ネコハチさんの第1部。パーカー・ハウス・ロールでのエディ片山(バンちゃん曰く京都のイアン・デューリー)とボトルキーパーズのワンマンライブ(超満員)、小川珈琲某店2Fでのナキミソと河村博司(河村さんが歌うのを初めて聴いた)、でこ姉妹舎での仮屋崎郁子(アコーディオン)と山田やーそ裕(ブラジリアンギター)による戦前歌謡曲(服部良一「風は海から」など)を歌うなど・・・。そして、磔磔での「薄花葉っぱ」と「吉田省念と三日月スープ」の対バンは、写真にあるように最後に仲良く合同演奏(古い言い方だ!)、薄花葉っぱのあづみちゃんはピアノを弾いています。二組とも京都だから生まれたバンドですね。クーラーの効いた部屋ではなく、蒸し暑い夏でも打ち水と風通しで過ごす町屋のたたずまいから生まれた音楽という感じですか。「薄花葉っぱ」には昨年出演してもらいましたが、「吉田省念と三日月スープ」は今年、新京極「TANABATALIVE」(8月7日)に出演してくれます。吉田くんとトランペットのファンファンちゃんは、今年の夏「くるり」のメンバーとしてフジロックなどの夏フェスに出演する事になったので、早めに声をかけておいてよかったと思います。

そして、最後はィイネ!ィイネ!でお馴染みの「クレージー・ケン・バンド」毎年恒例初夏のライブハウスツアーです。ここ数年は、毎年夏にニューアルバムがリリースされていましたが、今年は7月6日にシングル「いっぱいいっぱい」発売のみと少し物足りません。次の仕掛けに期待いたしましょう。会場のなんばHatchは、ビミョーな満員状態でこちらも物足りません。拡大ファンクラブの集いになってはいけない。ブランニューな曲とブランニューな客は、東洋一のサウンドマシーンの推進力です。などと言いながら、印象に残っているのが「シスター・リー」とアンコールでの剣さん弾き語りによる「チャイナタウン」というのは、拡大ファンクラブ的ですね。初めてご覧になった方は、どのような感想を持たれたのでしょうか?あれ、もう終わり!?字数というのは、残酷なものでございます。剣さんについては、また改めてしっかりと書かせていただきます。

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